COLUMN

ド・モンティーユ & 北海道

小規模ワイナリーが次々に生まれ、独創的かつ高品質なワインが多数リリースされていくことで、躍進を続けている日本ワイン。

北海道という土地は、そのような隆盛の舞台の中でも最も多くのスポットライトが集まる産地だろう。ドメーヌ・タカヒコをはじめとする余市や、多くのスタート・アップ生産者を輩出する10Rワイナリーが位置する岩見沢など、源泉が点在している。


一方で、2018年、そのような発展の形とはやや性質を異にする出来事が起こった。

ブルゴーニュの名門ドメーヌ「ド・モンティーユ」の函館への進出である。 歴史と基盤をもつブルゴーニュの生産者。そのような老舗ワイナリーが、新天地として、まだ黎明期にある日本の北海道を、かつワイン産地として殆ど歴史を持たない函館を選択したことは、多くの驚きを呼んだ。

ドメーヌ・ド・モンティーユ

ド・モンティーユは、フランス革命以前の1730年に設立され、現在も家族経営が続けられている歴史あるドメーヌだ。

その名前が示すように封建領主の家系にルーツを持つため、かつてはミュジニーやボンヌマール、レ ザムルーズなど煌びやかなクリマの数々を20haも所有していた。ヴォルネイ拠点のドメーヌというイメージが根強いが、それは、経済的な理由でそれらの畑を手放さなければならなかったためである。

ド・モンティーユは、ドメーヌが位置するヴォルネイの畑を2.5ha残したのみで、他の区画はすべて失った。
現当主であるエティエンヌ・ド・モンティーユ氏が、ワイナリーに参画したのは1990年。弁護士とワイン生産者の二足草鞋で働き続けていた父・ユベール氏を見て育った彼は、パリ高等政治学院で法学を収め、弁護士資格を取得、M&Aのコンサルタントなどのキャリアを経て、83年にワイナリーへ戻ってきた。


そこから7年という長い歳月をかけて、醸造・栽培に関する学業とドメーヌでの研修を経て、醸造責任者の任についたのだ。

1995年、ドメーヌの共同経営者となってからのエティエンヌの躍進は目まぐるしい。ビオディナミ農法での栽培を全自社畑に適応、ユーロリーフ認証を取得し、その一方では、自社畑の大幅な拡大に着手。

クロ・ド・ヴージョやヴォーヌ・ロマネ マルコンソールをはじめとした著名なクリマを取得、そして、業務委託という形で、栽培・醸造を担っていた「シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェ」を買収した。
それによって、シュヴァリエ・モンラッシェをはじめ、シャルドネの一流クリマを一網打尽に手に入れた。

当初2.5haだった自社畑は、36haにまで広がりを見せた。ヴォルネイの小規模ドメーヌという既存のイメージを一新しようというような動きは、ド・モンティーユのラインナップを鑑みるに見事に作用していると言えるだろう。そのように、まるでかつての栄華を取り戻そうとするかの勢いで、グランクリュ街道を突き進む、エティエンヌ・ド・モンティーユ。

そんな彼が、チャレンジのネクスト・ステージとして選んだのが、「北海道」だったことは、やはり意外というほかないように思われる。