COLUMN

Misono Vineyard

「好きこそ物の上手なれ」
そうは言われても、好きを生業にするのは難しい。好きなことを仕事にしたいと思っていても、なかなかその一歩を踏み出せない。食べていけるのか?という現実的な問題が立ちはだかり、自分の気持ちと生活の糧を天秤にかけて、自分の気持ちにそっと蓋をする。大半の人間はそうだろう。

今回取材をしたMisono Vineyardの松村さんは違う。大手総合商社で航空機関連やTV放送業務など、世界を股にかけてバリバリ仕事をしていたにも関わらず、「ブルゴーニュワインが好き」という一点で、誰もが羨む仕事を手放し、東京・青山でブルゴーニュとシャンパーニュ専門のワインバーの経営に乗り出す。しかし、ワインを提供するだけでは飽き足らず、今度は自分でワインを造るという道を進み出したのだ。

▲ ワイナリーの入り口には、青山で経営していたワインバー「Burgundy」の看板が飾ってある。
▲ ワイナリーの入り口には、青山で経営していたワインバー「Burgundy」の看板が飾ってある。

かくして、2019年に北海道余市町で元牧草地を購入、翌年2020年には隣接する元果樹園を購入する。そして、2021年にはワイン製造免許を取得し、Misono Vineyardが誕生するのだ。「好き」のレベルが違うのか、心の声に忠実なのか…驚くべき行動力だ。「好き」が原動力だからこそ、自分の好きなブルゴーニュワインが教科書でありバイブル。そして研究は徹底的に行い、自分の選択に対するロジックはシンプルで明快。話を聞いていると、魔法をかけられたかのように松村さんと同じ思考になっていくのだ。笑

▲ 写真中央の柏(ドングリ)の大木と小道を挟んで右側が元牧草地、左側が元果樹園の畑。東向きの丘陵地で陽当たりも風通しも抜群の立地だ。

ブルゴーニュ地方のコート・ドールを思わせる畑との出会い

2018年、青山でワインバーを経営しながら、長野県にある千曲川ワインアカデミーで、ブドウ栽培とワイン醸造、ワイナリー経営などを学ぶと共に、自身のワイナリー設営に向けた畑も探していた。長野県内でも畑を探したが、土地が細分化されていて、纏まった土地を入手するには多数の地主の了解を得る必要があり、現実的ではなかった。