COLUMN

ル・レーヴ・ワイナリー

「たとえば余市には、たくさん素晴らしいワイナリーがあるのですが、醸造所のみがある場合が多いですよね。
自分がやるときにはそうではなくて、必ずワイナリーで自分のワインが飲めて、景色を楽しめる場所にしたいと思いました。」


北海道余市仁木町旭台。

大手ウヰスキー工場へ流れ込み、鮎の北限たる余市川の左岸の段丘上に「ル・レーヴ ワイナリー」は位置している。

葡萄の栽培に絶好と言える南向きの斜面には2.2haの葡萄畑が広がり、その斜面の麓にはインダストリアルな外観の瀟酒な建築物、その目の前には安らぎを感じるようなブリティッシュガーデンが広がっている。

建物の内部には、自社製造のワインや趣向の凝らされたセイボリータルト、ケーク・サレ、キッシュなどを味わうことのできるカフェ、素泊まりで利用が可能な1組2名限定の宿泊施設が設けられている。

「お洒落」なんて語彙の貧困を露呈するような言葉を用いるのは極めて忍びないが、そう言わざるを得ない。

カッコいい。

ゴテゴテしない在り方で、洗練されたあり方で。


代表である本間祐康さんがワイナリーを興したのは2015年。

とは言っても、それは土地を造成し苗植えを行った年だ。2018年にカフェ兼ゲストルーム兼醸造場を建設し、自社での醸造を始めたのが2020年ヴィンテージからである。

つまり新しいワイナリーだということだ。

ル レーヴ ワイナリー 代表の本間裕康さん。日本でハットを被る唯一のVigneronだ。

だからこの新しさに対して、お客様を迎える設備の完成度、ホスピタリティといったらいいのか、それらに異常性を感じるのである。だってそんなワイナリーないですよ。

前述を振り返れば、周辺にはより農家的というか、牧歌的である種素朴な「風景」が広がっている。大きな資本のワイナリーであれば、そういった設計はあるいは可能かもしれないけれど、個人経営でここに到達しているのは、やっぱり変である。

「元々20代の頃からワインが好きで、妻と一緒に国内や海外のワイナリーを訪問したり、そのうち栽培や醸造にも興味を持つようになりました。」

私もワイン好きである。

ワインが好きであって、ワインを作るなら私はワインを作ることのみをおこなうだろう。擁護という文脈でもないけれど、ワインを作ることはとてもハードなことだ。農作業で忙しい、醸造作業に手が離せない。そういったことが普通であるし、そういうものだ。それをああだこうだいう気はない。

例えば多くのワイナリーがそうであるように、もし宿泊、飲食というものを可能性として考えていたとして、それはずっと先に見据えるところのものだ。いつかやります。

だが、本間さんはちょっと違う。

「自分たちがワイン好きで旅行した時に欲しいと思っていたもの、広大なブドウ畑を眺めながらお客様にゆったりとくつろいで頂ける空間やゲストルームなど、自分たちがあったらいいなと思っていたものを少しずつ実現しています。」

これはホームページの言葉だが、ワイン好きであるということは、単にボトルを開けてワインを飲むことが好きということにとどまらない。それは本間さんご夫婦がかつてしていたように、ワイナリーを訪ね、ワインを飲みながら景色や料理を楽しみ、ひいてはその地域を知るような営みのことを指す。だからワインを作るだけでなく、ワインを楽しむ際にあるその周辺までも、まだ黎明期と言える今の段階で作り上げているのだ。

「そこまで日本ワインには詳しくなかったのですが、クリサワブランを飲んで、日本でもそんなワインを作ることができるのかと衝撃を受けました。その後、異業種からワインを作り始めた方が多く出てきていることを知り、自分にもできるかもしれないと思いました。」