COLUMN

木村農園

日本のピノ・ノワールの第一人者。そう言っても過言ではない。今でこそ、余市町のピノ・ノワールの知名度は高いが、木村農園は、栽培が難しいとされるピノ・ノワールを黎明期からずっと育て続けてきた。その質の高さに魅了され、余市町でピノ・ノワールを栽培する農家やワイナリーが増加。今では余市の代表的な品種の一つとなり、国内外から熱い視線が送られている。今回は、その木村農園で先代と共にピノ・ノワールの栽培を続けてこられた木村幸司さんにお話しを伺った。

木村農園3代目の木村幸司さん。

美しい畑を闊歩する

北海道西部、積丹半島の付け根に位置する余市町。余市湾を眺めるように、なだらかな丘陵地にブドウ畑が広がる。木村農園は余市湾から少し内陸に進んだ場所に位置する。穏やかな起伏が連続する畑は適度な傾斜があり、心地のよい風が常時吹き抜ける。丘に広がる一枚畑の広さは8.5ha。見渡す限りのブドウ畑が美しい。

暖流の対馬海流の影響で、道内では比較的温暖な気候を誇る余市町。この温暖な気候を活かし、明治時代から果樹の栽培が盛んな土地だ。木村農園は、木村さんのお祖父様の代からこの地でリンゴを中心に、サクランボ、梨、プラム、生食用ブドウの栽培を稼業としてきた。しかし、2代目となるお父様が農園を切り盛りしていた1970年代からリンゴ価格が暴落。この危機を乗り越えようと、近隣農家7人で一念発起し、ワイン用ブドウの栽培を開始した(→詳細はこちら「安藝農園」から)。木村農園には、隣の農家の藤本氏から「リンゴ、切れるか?」と声がかかったそうだ。農園がある場所は、土壌・気温・風の通り、どれをとっても果樹の栽培に適した場所。それはワイン用ブドウにとっても同じだった。畑は斜面にあるので冷気もたまらず、霜の被害もない。通常であれば、収穫後、ブドウの葉は落葉するが、畑の中には冬でも雪と共に青々とした葉を付け続ける木もあるというのだから驚きだ。

1984年、最初に植えたのはケルナー。続く1985年に植えたのがピノ・ノワール。当時広さ50aだった畑の6割を占めたケルナーは、今も古木として現役だ。また、当時植えた古木のピノ・ノワールも現存している。現在は、それらに加え、シャルドネ、ピノ・グリ、ムニエを合わせた5種類を栽培している。育てたブドウは、千歳ワイナリー、ココ・ファーム・ワイナリーの2社を中心に提供し、残る小ロットをスポットで他のワイナリーに卸すこともあるそう。