COLUMN

ヒトミワイナリー

滋賀県東近江市にあるヒトミワイナリー。

滋賀県と言えば琵琶湖という安直なイメージしか持ち合わせていなかったこともあり、ワイナリーがあると聞いて驚いた。滋賀県は中央に琵琶湖、その周囲に山地がある。東近江市は県の南東部に当たり、そのまま東に進めば三重県境の鈴鹿山脈に抜けるという位置関係で、東に山地、南東から北西に伸びる扇状地、そして西に琵琶湖岸に至る平地に大分される。
ワイナリーがある東近江市永源寺地区は、特に紅葉が有名で、四季を通じて豊かな自然が楽しめる場所だ。

ワイナリーがオープンしたのは1991年。
今年で31年目を迎える。

ヒトミワイナリーのお客さんの大半はワインが飲めない人です。

衝撃的なこの一言からインタビューがスタートした。
2014年にヒトミワイナリーに入社された、栗田さんの言葉だ。栗田さんはJSA認定ソムリエ、ANSA認定ワインコーディネーターの資格をお持ちだが、元々ワインが大嫌いだったと言うのだから驚きだ。前職の飲食店で提供するお酒のラインナップを選ぶ中、これも元々嫌いだったというビールの勉強をし始めたら、酵母の香りや旨味が感じられるベルギービールの美味しさに目覚めたという。日本酒でも深い味わいの純米生酛や山廃が好み。

「いいものを見つけてお客様に届けたい!」という気持ちが強くなったという。

その後、ワインの勉強を始め、嫌いなワインでもいくつか飲めると思えるワインが出てきた。そして、日本のワイナリーを巡る中でヒトミワイナリーに出会い、その味わいと美味しさにノックアウトされ、通い詰めたそうだ。

惚れ込んだら一直線…仕事を辞めてヒトミワイナリーの門戸を叩いた。ポストがないと一度は断られたが、諦めずに待っていたら、しばらくして店長のポストを譲り受けたそうだ。猪突猛進という言葉がぴったりの度胸と行動力に、目が点になった。

栗田さんは言う。

「日本酒や焼酎でも惚れ込んだ先はあるが、産業のすそ野が広く、好きな蔵元が数件倒産したとしても、まだ自分が飲みたいと思えるものはいくつかある。けれど、ヒトミワイナリーがいなくなったら、自分が美味しいと思えるワインが飲めなくなってしまうと思った。」

このワイナリーが存続する一助になりたい…純粋な願いだった。
「大手が流通する、一般的なワインが飲めないと思っている人の考えを覆したい」と言う。
ヒトミワイナリーのワインならきっと美味しいと思ってもらえるはずだから。

一般的ではない=不味い、ではない。
一般的でなくても美味しいものは美味しいのだから。こういう思いを日々お客様に伝えているという。

ヒトミワイナリーが大好きという気持ちが溢れる栗田さん。