COLUMN

グレープ・シップ

倉敷駅から20分程車を走らせ、岡山県倉敷市船穂町にやってきた。倉敷といえば、昔ながらの白壁の街並みが美しい美観地区や日本初の私立西洋美術館である大原美術館が頭に浮かぶ。そういえば、国産ジーンズの発祥の地でもあったよな…あ、桃やブドウといったフルーツも捨てがたい…なんてことを思いながら到着したのが、今回の取材先のグレープ・シップ。

「晴れの国おかやま」として知られる岡山県の中でも瀬戸内側に位置し、温暖な瀬戸内海式気候に恵まれた場所で、マスカット・オブ・アレキサンドリアという品種を中心に栽培しナチュラルワインを造っているワイナリーだ。代表の松井さんとスタッフの木曽さんに色々とお話を伺った。

▲ 代表の松井さん。倉敷やマスカット・オブ・アレキサンドリアに対する想い、コミュニティを大事にする姿勢、そしてワイン造りを楽しむ様子に「こんな振る舞いができたらな~」と思わせられる方だ。
▲ カラッした笑顔と語り口が魅力的な木曽さん。明るく前向きな姿勢に話をするだけで元気をもらえる。

ワイン造りのきっかけ

松井さんは関西でフレンチのシェフとして長く活躍していたが、料理人としてフランスに留学した時にナチュラルワインと出会い、魅了される。その際、現地のワイナリーでブドウ栽培とワイン醸造に携わることに。帰国後もシェフを続けたが、ワインに携わりたいという気持ちが大きくなり、ブドウ栽培から始めようと一大決心されたのだ。

北海道を始めとする日本ワインの有名産地への移住も検討したそうだが、出身地の倉敷はブドウ栽培で有名で、親元にも近い。松井さんは2010年にUターンする形で船穂に移住し、2年間の農業研修を経て、2012年にマスカット・オブ・アレキサンドリアを栽培し始める。マスカット・オブ・アレキサンドリアを選んだのは、

▲ ワインの香りを確かめる姿からもワインが好き!という気持ちが溢れている。

「単に好きなだけ」ではあるが、「農家の高齢化で畑が耕作放棄地になったり、シャイン・マスカットの人気で栽培を切り替える農家が増えたりする中、マスカット・オブ・アレキサンドリアが衰退するのを何とかしたいという思いが強くなった。シャイン・マスカットの人気が高くなればなるほど、負けたくないという気持ちも盛り上がった」

と胸の内を明かしてくれた。

マスカット・オブ・アレキサンドリアの全国生産量の9割以上を占める岡山県の中でも、船穂地区は一大産地だ。この地で昔から栽培されてきた愛着あるブドウを残したい。そのためにも美味しいブドウを栽培し、生食の文化を絶やさないと共に、美味しいワインを造ることで文化の裾野を広げよう!そう決心したのだ。