COLUMN
安心院葡萄酒工房
大分県北部宇佐市にある安心院(読み:あじむ)葡萄酒工房。早朝、別府から大分道を通って向かったところ、前日から降り続く雨の影響で濃霧の中をひた走ることになった。幻想的とも言えるし、怖いとも言える…聞くところによると、この道路は日本一悪天候による通行止めが多い高速だそう!
しかし一転、安心院葡萄酒工房に着いて暫くすると、お天気は回復。晴れ間まで見せてくれた。さすが瀬戸内式気候の場所。九州の中では雨も少なく、年間1500ミリ程度で、特に4-8月までの雨量が少ないそうだ。
今回はこの場所で、安心院葡萄酒工房立ち上げから現在までワイナリー全般の業務を行っておられる岩下さんにお話しをお伺いした。
勝負に出た!量も質もあきらめない
50年を超えるワイン造りの歴史
宇佐市は、瀬戸内式気候で降雨量が少なく、長い間、農業を行う上で干ばつが問題となっていた。1960年代になると、国による農地開発事業で灌漑設備が導入され、その中で300-400ha程度の生食用ブドウ団地ができる。
安心院町でブドウが収穫できるようになると、安心院葡萄酒工房の母体である三和酒類(株)は1971年にワインの製造免許を取得、ワイン造りをスタートする。三和酒類(株)は日本酒の会社だが、名前を聞いてピンと来る読者もおられるだろう。同社は「下町のナポレオン」こと、「いいちこ」のメーカーだ。いいちこの会社がワイン!?と驚かれる方も多いとは思うが、驚くのは早い。三和酒類のワイン造りはいいちこ製造よりも歴史が長いのだ!
いいちこ工場がある隣町でのワイン醸造が続いたが、畑に隣接する場所でワイン醸造を行うべく、2001年に現在の場所に安心院葡萄酒工房が設立される。並行して、メルロ、シャルドネ、といったワイン用ブドウ品種を契約農家に栽培してもらった。また、自社の試験圃場での栽培を試行錯誤して続け、ついに2011年には自社農園の下毛圃場での栽培がスタートする。